外国人雇用シリーズ:第1回 雇うとき/第2回 給与と手続き/第3回 退職・帰国するとき

外国人従業員の退職は、日本人の退職より手続きが多くなります。会社が出す届出、本人が出す届出、住民税の精算、そして帰国する場合の税金と年金。順番に整理します。

※この記事は2026年11月時点の公表資料に基づいています。個別の判断は、所轄の税務署・年金事務所・市区町村・地方出入国在留管理局、または専門家にご確認ください。

1. 会社が出す届出

雇用保険に加入していた人

  • 「雇用保険被保険者資格喪失届」を、離職の翌日から起算して10日以内に提出します
  • これで外国人雇用状況の届出(離職)を兼ねます

雇用保険に加入していなかった人

「外国人雇用状況届出書(様式第3号)」を、離職の翌月末日までに提出します。

出入国在留管理庁への届出

外国人雇用状況の届出を提出していれば、入管への「所属機関による届出」は不要とされています。ただし、特定技能の外国人の場合は、会社も特定技能所属機関として、雇用契約の終了から14日以内に入管へ届け出る必要があります。

社会保険

健康保険・厚生年金の資格喪失の手続きは、日本人と同じです。

2. 本人が出す届出と、在留資格への影響

ここは、会社が本人に伝えておきたいことです。

所属機関等に関する届出

「技術・人文知識・国際業務」「技能」「特定技能」などの在留資格の人は、契約先との契約が終了したときや新しい契約を結んだときに、事由が生じた日から14日以内に出入国在留管理庁へ届け出る義務があります。届け出なかった場合は罰則(20万円以下の罰金)の対象になるほか、在留諸申請で不利になる場合があるとされています。

在留資格の取消し

就労系の在留資格の人が、正当な理由なく、在留資格に係る活動を継続して3か月以上行わないで在留している場合、在留資格の取消事由に当たります。

取消しの対象となった場合、出国のために最長30日の期間が指定され、その間に出国することになります。指定期間内に出国しなかった場合は、退去強制や刑事罰の対象になります。

つまり、退職した外国人には、次の仕事を見つけるまでの時間に制限があるということです。

だから、会社に求められること

厚生労働省の指針は、次のように定めています。

  • 外国人労働者に対して安易な解雇を行わないようにすること
  • 安易な雇止めを行わないようにすること
  • 解雇(本人の責めによるものを除く)など会社の都合で離職させ、本人が再就職を希望する場合は、在留資格に応じた再就職が可能となるよう、必要な援助に努めること

3. 住民税の精算

住民税は前年の所得に対して翌年に課税されるため、退職の時点でまだ納めていない分が残っていることがあります。

一括徴収

  • 6月から12月に退職する場合は、本人の申出があれば、退職時の給与や退職金から残りの住民税をまとめて差し引けます
  • 1月1日から4月30日までに退職する場合は、5月31日までに支払う給与や退職金が残りの税額を上回る限り、申出がなくても一括徴収します

納税管理人

出国前に住民税を納められない場合は、本人が日本に住む人の中から納税管理人を選び、住所地の市区町村に届け出る必要があります。これは本人が行う手続きです。

帰国後に請求が届いても払えない、という事態を防ぐため、退職前に住民税の残額を確認し、一括徴収か納税管理人かを本人と決めておくことが大切です。住民税の基本は第2回で説明しています。

4. 所得税:在職中に出国するか、退職してから出国するか

年の途中で日本を離れる場合、所得税の扱いは「会社に在籍したまま出国するか」「退職してから出国するか」で変わります。

  • 在籍したまま出国して非居住者になる場合——海外勤務などで1年以上の予定で日本を離れる場合は、出国の時までに会社が年末調整を行います(扶養控除等申告書を提出した居住者で、その年の給与が2,000万円以下の人)
  • 退職してから出国する場合——年の途中で退職した人は、原則として年末調整の対象になりません(12月の給与を受けた後の退職などを除く)。所得税の精算は、本人が出国までに確定申告をするか、納税管理人を定めて申告することになります

退職して帰国するケースの多くは後者です。会社が源泉徴収票を早めに渡しておくと、本人の手続きが進めやすくなります。

5. 退職金を出国後に支払う場合

退職後に出国し、非居住者になってから退職金を支払う場合、居住者だった期間の勤務に対応する部分について、20.42%の所得税等が源泉徴収されます。原則としてこの源泉徴収で課税関係が完結します。

ただし、退職所得の選択課税という制度があります。居住者として受け取ったものとみなして計算した税額で課税を受けることを選べる制度で、その年の翌年1月1日(それより前に退職手当等の総額が確定した場合は、その確定した日)以後に、「退職所得の選択課税の申告書」を所轄の税務署に提出します。

退職金の額によっては、この選択で税額が変わります。退職金を支払う予定がある場合は、出国前に税務署や税理士に確認しておくことをおすすめします。

6. 脱退一時金:帰国する人が受け取れる年金

日本の年金に加入した外国人が帰国する場合、脱退一時金を請求できることがあります。本人の制度ですが、会社が知らせないと、本人が知らないまま帰国してしまうこともあります。

支給要件(厚生年金の場合)

  • 日本国籍を有していない
  • 厚生年金保険(または国民年金)の被保険者でない
  • 厚生年金の加入期間の合計が6か月以上ある
  • 老齢年金の受給資格期間(10年)を満たしていない
  • 障害厚生年金(障害手当金を含む)などの年金を受ける権利を有したことがない
  • 日本国内に住所を有していない
  • 最後に被保険者の資格を喪失した日から2年以上経過していない

請求期限と上限

  • 請求できるのは、日本に住所を有しなくなった日から2年以内です
  • 計算に用いる月数の上限は60か月(5年)です(2021年4月以降に加入期間がある場合)

税金

  • 厚生年金の脱退一時金からは、20.42%の所得税等が源泉徴収されます。国民年金の脱退一時金は源泉徴収されません
  • 源泉徴収された税金は、退職所得の選択課税による申告で還付を受けられる場合があります。そのためには、帰国前に、日本国内の最終の住所地を管轄する税務署へ「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を提出しておく必要があります。納税管理人には、日本に住所または居所がある人ならなれます
  • 脱退一時金の送金後に届く「脱退一時金支給決定通知書」の原本を納税管理人に送り、申告してもらいます

重要な注意点

日本年金機構は、脱退一時金を受け取った人について、こう注意を促しています。

いかなる場合でも、脱退一時金を請求する以前の日本の年金に加入していた期間がすべてなくなります。

たとえば60か月を超えて加入していた場合、支給の計算に使われるのは60か月分までですが、加入期間はすべてなくなります。

社会保障協定との関係

  • 年金加入期間の通算を定めた協定を結んでいる国の加入期間を含めて、受給資格期間が10年(120か月)以上あれば、脱退一時金は請求できません
  • 10年未満であれば請求できますが、受け取ると日本の加入期間はなくなり、通算もできなくなります

将来、協定国の年金と通算して老齢年金を受け取れる可能性がある人は、脱退一時金を受け取るかどうかを慎重に判断する必要があります。協定を結んでいる国は第2回で一覧にしています。

再入国を予定している場合

  • 再入国許可(みなし再入国許可を含む)を受けて出国する場合、市区町村に転出届を出していれば請求できます。転出届がないと、再入国許可の有効期間が過ぎるまで国民年金の被保険者とされるため、請求できません
  • 技能実習を終えて帰国し、その後特定技能で再び入国する場合などで、加入期間の合計が60か月を超える見込みのときは、在留期間が終わって帰国するたびに請求が必要になる場合があるとされています

7. 退職前に、本人と確認しておくこと

ここまでの内容を、チェックリストにします。

  • 次の仕事は決まっているか。決まっていない場合、3か月の制約を本人は知っているか
  • 所属機関等に関する届出(14日以内)を本人が行うことを伝えたか。特定技能なら、会社の届出も済ませたか
  • 住民税の残額を確認し、一括徴収か納税管理人かを決めたか
  • 年の途中で退職して帰国する場合、所得税の確定申告が必要になることを伝え、源泉徴収票を渡したか
  • 退職金を支払う場合、支払い時期が出国の前か後か
  • 帰国する場合、脱退一時金の制度を伝えたか。納税管理人の届出を出国前に行うことを伝えたか
  • 年金通算の協定を結ぶ国の出身者なら、脱退一時金を受け取るかどうかを本人が検討できる材料を渡したか

会計士として、こんなお手伝いをしています

退職・帰国の手続きは、会社の手続き・本人の手続き・税金・年金が同時に動きます。どれか一つが抜けると、本人が帰国後に困ることになります。

  • 退職時の精算の全体設計——住民税・所得税・退職金・脱退一時金を一覧にして、本人と会社がそれぞれ何をいつまでにやるかを整理します
  • 退職金の支払時期の整理——出国の前と後で手続きがどう変わるかを一覧にします。税額の試算や個別の税務の判断は、税理士と連携します
  • 本人への説明資料——帰国後に受け取れるお金と、そのために出国前に必要な手続きを、本人が理解できる形にまとめます
  • 専門家との連携——在留資格に関することは提携する行政書士と、年金や労務の手続きは提携する社会保険労務士と連携して進めます

きちんと送り出せる会社は、次の人にも選ばれます。退職の手続きを、採用活動の一部として設計するお手伝いをします。

まとめ

  • 会社の届出は、雇用保険の資格喪失届(離職の翌日から10日以内)または外国人雇用状況届出書(翌月末日まで)。特定技能なら入管への届出も
  • 本人は14日以内に所属機関等に関する届出。正当な理由なく3か月以上活動しないと、在留資格の取消しの対象になりうる
  • 住民税は一括徴収か納税管理人。1月1日〜4月30日の退職は、条件を満たせば申出がなくても一括徴収
  • 退職してから出国する人は原則として年末調整の対象外。本人が確定申告するか、納税管理人を通じて申告する
  • 非居住者への退職金は20.42%の源泉徴収。退職所得の選択課税で税額が変わる場合がある
  • 脱退一時金は6か月以上の加入・出国後2年以内・上限60か月。厚生年金分は20.42%が源泉徴収されるが、納税管理人を立てれば還付の申告ができる
  • 脱退一時金を受け取ると、日本の加入期間はすべてなくなる。年金通算の協定がある国の出身者は特に慎重に
この記事のうち、制度の内容にあたる部分は末尾の出典(公的機関の資料)に基づく一般的な説明です。個別の事情によって扱いは変わります。どう進めるかの判断は筆者の見解であり、唯一の正解があるわけではありません。税・年金・在留資格の個別の判断は、所轄の機関や専門家にご確認ください。

出典

いずれも公的機関の資料です(2026年11月3日にリンク先を確認)。

外国人従業員の退職や帰国を控えている段階でも構いません。会社と本人がそれぞれ何をするかを、一緒に整理します。代表の経歴は プロフィール をご覧ください。ご相談は お問い合わせ からどうぞ。初回は無料です。