経理AIシリーズ:第1回 導入の順番/第2回 情報のルール/第3回 確認ルール

経理にAIを入れたあと、その結果を誰が、どう確かめるか。ここが決まっていないと、AIは安心して使えません。とはいえ、全部を人が見直していては、入れた意味がなくなります。大切なのは「どこを見るか」をルールとして決め、社内で回し続けられるようにすることです。

AIの間違い方は、人と違う

人の間違いには、ある程度の傾向があります。桁を打ち間違える、行をずらして転記する、忙しい月末に増える。経験のある担当者は、こうした間違いがどこで起きやすいかを知っています。

AIの間違いは、少し性質が違います。

  • もっともらしいが、間違っている——形式は整っていて、一見すると正しく見える。そのため、ぱっと見では気づきにくいのです。
  • 毎回少しずつ違う——同じような資料を渡しても、読み取り方や分類が微妙に変わることがあります。先月うまくいったから今月も大丈夫、とは限りません。

人の間違いを前提にしたこれまでの確認のやり方が、そのままでは通用しないことがある、ということです。

「全部見る」は続かず、「見ない」は危ない

AIの結果を、人が1件ずつすべて確認する。これなら安心ですが、手間はほとんど減りません。続けるうちに、確認が形だけになっていきがちです。

反対に、AIを信じて何も見ない。これは危険です。間違いがあっても気づかないまま決算まで進み、後から大きな手戻りになります。

だから必要なのは、その間です。全部ではなく、見るべきところを決めて、そこだけを確実に見る。これを確認ルールと呼びます。

確認ルールの4つの型

確認ルールといっても、難しいものではありません。経理の現場で昔から使われてきた確かめ方を、AIの結果に当てはめるだけです。

型見ること防げること
合計と件数元の資料と処理結果の、合計金額・件数を比べる取りこぼし、二重計上
前月からの増減科目別・取引先別に前月と比べ、大きく動いたところだけ見る分類の誤り、金額の読み違い
不一致・未処理の一覧照合で合わなかったもの、処理できなかったものだけを人が見る処理漏れの放置
自信のない項目読み取りがあいまい、分類の候補が複数ある項目に印をつけ、人に回すもっともらしい誤り

どの型をどこに使うかは、会社の業務やデータによって変わります。最初から完璧を目指さず、使いながら足したり外したりしていけば十分です。

人が判断すること、AIに任せること

確認ルールとあわせて決めておきたいのが、役割の線引きです。

AIや自動化に任せる人が行う
データをそろえる、照合する、候補を出す、一覧にする会計処理をどうするかの判断、承認、支払の実行

この取引をどの科目にするか、この支払いを実行してよいか。ここは担当者や責任者が決めるところです。線引きがはっきりしていれば、AIの結果は「判断の材料」として扱えます。材料がそろっていれば、人は判断に集中できます。

担当者が替わっても回るように

確認ルールは、特定の人の頭の中にあるだけでは意味がありません。担当者が休んだり替わったりした途端に、確認が止まってしまうからです。そこで、次の3つを残しておきます。

  • 手順書——毎月、何を、どの順番で確認するか
  • 設定——AIや自動化に、どんなルールを与えているか
  • 検証の結果——導入時にどう試し、何を確かめたか

これがあれば、新しい担当者でも同じように確認できます。経理が一人に頼りきりになっている会社ほど、効いてくるところです。

業務やルールが変わったら、確かめ直す

確認ルールは、一度決めたら終わりではありません。取引先が増えた、請求書の様式が変わった、会計ソフトが更新された。こうした変化があると、AIの動きも変わることがあります。

変化があったときは、しばらく確認を手厚くし、結果が安定しているかを見直します。何かを変えたら、変えたあとも確かめる。これを習慣にしておくと、思わぬ間違いを長く放置せずに済みます。

まとめ:ルールを決めるところに、会計の知識が要る

AIの結果を日々確かめるのは、社内の経理チームです。日々の確認と判断は、業務を一番よく知る社内で行うのが確実です。

ただし、「どこを見れば間違いに気づけるか」を決めるところには、会計の知識が要ります。どの数字が合っていれば安心できるか、どの動きが危ない兆しか。ここを外すと、確認しているつもりで大事なところを見落とします。

  • 全部は見ない。見るところを決めて、そこだけ確実に見る
  • 合計と件数、前月からの増減、不一致の一覧、自信のない項目の4つの型から始める
  • 判断と承認は人、その前の準備をAIに任せる
  • 手順書・設定・検証の結果を残し、変えたあとも確かめる
この記事は特定の制度や統計に基づくものではなく、経理業務でAIの結果を確かめる方法についての筆者の見解です。唯一の正解があるわけではなく、どの型が合うかは会社の業務やデータによって変わります。
当事務所の 経理AI導入の支援 では、公認会計士が経理の要件と確認ルールを設計し、日々の処理と判断はお客様、仕組みの側は当事務所という分担で進めます。確認ルールの作り方から相談したい、という段階でも お問い合わせ からどうぞ。