「ゼブラ企業に使える補助金はありますか」と聞かれることが増えました。

先に結論をお伝えすると、「ゼブラ企業向け」という名前の補助金は、現時点では見当たりません。ただし、使える制度はあります。この記事では、各省庁の一次資料で確認できたものだけを整理します。

※この記事は2026年9月時点の情報です。年度ごとに内容が変わるため、実際の申請前には必ず各省庁のページをご確認ください。

前提:「ゼブラ企業補助金」は存在しない

国が「ゼブラ企業」という言葉を掲げている事業は、中小企業庁のローカル・ゼブラ関連事業です。ただしその中身は、企業に直接お金を配るものではなく、調査・実証・仕組みづくりが中心です。

では何を使うのか。答えは、「地域課題解決型の事業」を対象にした既存の制度です。ゼブラ企業を名乗るかどうかは関係ありません。やっている事業の中身で判断されると考えるのが正確です。

中小企業庁——唯一「ローカル・ゼブラ」を掲げている

中小企業庁は「ビジネスの手法で地域課題の解決にポジティブに取り組み、社会的インパクトを生み出しながら、収益を確保する」企業をローカル・ゼブラ企業と定義し、その創出・育成を支援しています。

基本指針——2024年3月に「地域課題解決事業推進に向けた基本指針」が公表されました。多様な関係者が連携して地域課題に取り組むときの、進め方の要点をまとめたものです。申請の前に、まずこれを読むことをおすすめします。国が何を求めているかがわかります。

これまでの事業——令和6年度は「地域の社会課題解決企業支援のためのエコシステム構築実証事業」、令和7年度は「ゼブラ企業創出・育成のためのエコシステム定着に向けた支援・分析」として、インパクト評価を用いた実証調査やコミュニティ形成の調査が行われました。報告書はいずれも公開されています。

令和8年度(2026年度)の動き——事務局の委託先公募が令和8年5月11日から6月8日まで行われ、6月16日に採択結果が公表されました。示された事業内容は次の6つです。

  • 地域経済における資金循環促進に向けた調査及び検討会の実施
  • 地域エコシステムの創出を実現する「仕組み」の普及に向けた学びの場の制度設計・運営
  • ローカル・ゼブラ・コミュニティの醸成に係る調査・分析
  • 令和7年度実証事業の採択地域における地域経済循環の実践状況調査
  • 成果報告会の実施
  • 調査報告書の作成

あわせて、学びの場(スタディーツアー)の参加地域募集が2026年7月28日付で出ています。

直接お金が出る制度ではありません。ただしここに入ると、情報・人・つながりが手に入り、国が次に何をしようとしているかも早くわかります。

総務省——実際にお金が出る制度

ローカル10,000プロジェクト(地域経済循環創造事業交付金)は、地域課題解決型の事業を立ち上げる会社にとって、もっとも現実的な選択肢のひとつです。

  • 自治体が金融機関の融資と協調して、公費により助成する仕組み
  • 民間事業者の初期投資費用(施設整備・改修費、備品費など)が対象
  • ポイントは4つ——地域資源を活用した事業/地域課題への対応につながる事業/新規性がある事業/モデル性がある事業
  • 交付額の上限は最大5,500万円

注目すべきは継続率です。総務省の資料によれば、平成27年度から令和6年度に採択され事業化した314事業のうち、継続している割合は94%(令和7年7月31日時点)。自治体と地域金融機関が伴走支援を行う仕組みが効いていると説明されています。

申請の窓口は自治体側にあります。まずは市町村の担当課に相談するのが近道です。

農林水産省——インパクトを「見せる」ための道具

農業・農村分野で事業をしているなら、「農山漁村」インパクト可視化ガイダンス(令和7年3月28日公表)を押さえておく価値があります。

  • 企業の農山漁村への参画を促すことが目的
  • インパクトとアクティビティの因果関係を整理した例が43件掲載されている
  • ロジックモデルの作成・測定・開示など、インパクト測定・マネジメントの実務が書かれている
  • 企業版ふるさと納税など、資金の集め方の例も紹介されている

注意点として、この資料に「ゼブラ企業」という言葉は出てきません。ただし、社会的インパクトをどう示すかという実務は、そのまま使えます。補助金の申請書でも、金融機関への説明でも、考え方は同じです。

国土交通省——地域生活圏形成リーディング事業

暮らしのインフラを支える事業をしているなら、こちらです。日常の暮らしに必要なサービスが持続的に提供される「地域生活圏」の形成と、その担い手の育成を目的としています。

重視されているのは3つの観点です。官民パートナーシップによる「主体の連携」、分野の垣根を越えた「事業の連携」、行政区域にとらわれない「地域の連携」。先導的な取組や人材育成に対して費用を支援します。

令和8年度は、先導的な取組への支援がすでに採択結果まで公表され、人材育成への支援の公募資料も出ています。年度をまたいで公募が繰り返されるため、定期的に確認する価値があります。

環境省——制度をまとめて探せる場所

環境省の「ローカルSDGs -地域循環共生圏-」サイトには、府省庁をまたいだ支援メニューの一覧が載っています。企業版ふるさと納税・地方創生人材支援制度(内閣府)、ローカル10,000プロジェクト・地域おこし協力隊・地域活性化起業人(総務省)、生物多様性保全推進支援事業・脱炭素地域づくり支援(環境省)など。自分で探す手間が省けるので、最初に見る場所として便利です。

どこに相談すればいいのか

ローカル10,000プロジェクトのように自治体を通す制度があるので、まずは市町村の担当課に相談するのが早いです。地域の事情も踏まえて教えてもらえます。あわせて記事末尾の出典から省庁のページを直接見てください。制度は年度で変わります。去年あったものが今年ないこともあれば、その逆もあります。

申請の前に整えておくこと

制度は違っても、聞かれることはほぼ同じです。

  • どんな課題を、誰のために解決するのか
  • その結果、何がどう変わるのか(数字で言えるか)
  • その事業は、支援が終わった後も続くのか
  • 誰と組むのか(連携先が重視される制度が増えています)
  • お金の見通しはあるか(収支計画と資金繰り)

とくに最近は、社会的インパクトを示せるかどうかが問われる場面が増えています。農水省のガイダンスが公表されたのも、その流れの中の話です。

補助金に頼りすぎないために

補助金は、始めるためのお金です。続けるためのお金ではありません。交付が終わった瞬間に止まる事業を、いくつも見てきました。

申請の段階で、補助金がなくなった後にどう回すのかを描いておく。これができているかどうかで、その後が大きく変わります。加えて補助金は後払いが基本なので、先に出ていくお金の資金繰りも準備が要ります。

会計士として、こんなお手伝いをしています

補助金は、取ることより「取った後」のほうが難しい制度です。

  • 申請書の数値計画づくり——収支計画・資金繰り計画を、審査に耐える形に整える
  • 社会的インパクトの整理——何がどう変わるのかを、ロジックと数字で示せる形にする
  • 交付前後の資金繰り——後払いの期間をどう乗り切るか、つなぎの資金も含めて設計する
  • 補助金の会計処理——計上の時期、区分経理、実績報告に必要な帳簿の整え方を支援する
  • 補助金からの卒業設計——支援が終わった後も回るモデルを、申請の段階から一緒に描く
  • 複数制度の組み合わせ——どの制度をどの順番で使うか、事業の段階に合わせて検討する

補助金を取ること自体が目的になった事業は、補助金が切れたときに止まります。切れたあとも回る形を先に作る。そのための数字を一緒に組みます。

まとめ

  • 「ゼブラ企業向け」という名前の補助金は、確認できる範囲では存在しない
  • 国で「ローカル・ゼブラ」を掲げているのは中小企業庁だが、直接の資金支援ではなく仕組みづくりが中心
  • 実際に資金が出る制度としては、総務省のローカル10,000プロジェクト(上限5,500万円)がある
  • 農水省・国交省・環境省にも、地域課題解決型の事業が使える制度や道具がある
  • 制度は年度で変わるため、一次情報を直接確認すること
この記事のうち、制度や統計にあたる部分は末尾の出典に基づいています。一方、どう考えるか・どう進めるかの判断は筆者の見解であり、唯一の正解があるわけではありません。事業の性質によって答えは変わります。

出典

いずれも公的機関の一次資料です(2026年9月2日にリンク先を確認)。

「どの制度が使えるのか」「申請書の数字をどう作るか」という段階でも構いません。ご相談は お問い合わせ からどうぞ。初回は無料です。