買い物に行く店がない。病院が遠い。祭りの担い手がいない。地域の困りごとは、行政だけでは解決しきれなくなりました。
それをビジネスとして引き受ける会社を、ローカル・ゼブラ企業と呼びます。言葉の定義と、普通の中小企業との違い、国の支援、そして続けるためのお金の話を整理します。
ローカル・ゼブラ企業とは
国(中小企業庁)は、こう定義しています。「ビジネスの手法で地域課題の解決にポジティブに取り組み、社会的インパクトを生み出しながら、収益を確保する」企業。ここでいう社会的インパクトとは、事業活動や投資によって生み出される社会的・環境的な変化のことです。
もとになっているのはゼブラ企業という考え方です。社会性と収益性を両立させる会社をシマウマの白と黒の縞にたとえた言葉で、その地域版だと考えるとわかりやすいと思います。
ポイントは3つ。地域の課題に向き合っていること、ビジネスとして成立していること、そして生んだ変化を示せることです。
普通の中小企業と、何が違うのか
地域の中小企業は、もともと地域に貢献しています。雇用を生み、税金を納め、祭りにも協力している。では何が違うのか。
違いは、課題の解決そのものを事業にしているかどうかです。結果として地域に良い影響があるのではなく、地域の困りごとを解くことが売上になっている。もうひとつは、その成果を説明できるかどうか。何人の暮らしが変わったのか、何が維持できたのか。これを言葉と数字にできることが求められます。
逆に言えば、すでにやっていることの意味を捉え直すだけで、ローカル・ゼブラ企業と呼べる会社は各地にたくさんあります。新しく何かを始める話ではありません。
なぜ、国が力を入れているのか
人口が減り、行政の予算にも限りがあります。すべての地域課題を行政が抱えるのは、もう難しい。かといって、寄付や補助金だけに頼る取り組みは長続きしません。お金が止まれば、活動も止まります。
そこで期待されているのが、自分で稼ぎながら課題を解決し続ける会社です。持続する仕組みでなければ、地域は支えられないという考え方です。
国はどんな支援をしているのか
2024年、中小企業庁が「地域課題解決事業推進に向けた基本指針」を公表しました。多様な関係者が連携して地域課題に取り組むときの、進め方の要点をまとめたものです。令和6年度から実証事業が始まり、令和8年度(2026年度)も継続しています。
令和7年度の中身を見ると、支援の方向性がよくわかります。
- ローカル・ゼブラ企業を支えるエコシステム(支援の輪)の普及・拡大
- 社会的インパクト評価の活用に関する研究会
- 地域を超えた事業者どうしの連携の実証
- 多様な資金調達手法の整理
対象は企業だけではありません。地域の中間支援組織や、地域の中堅・大企業も含まれています。一社を育てるのではなく、支える側も含めた仕組みごと作ろうとしているのが特徴です。
どんな事業が当てはまるのか
公式の分類ではありませんが、わかりやすく整理するとこうなります。
- 担い手が減った産業を支える型——農業、林業、漁業、伝統産業などで、人手不足や技術継承の課題に取り組む
- 暮らしのインフラを守る型——買い物、交通、医療、住まいなど、生活に欠かせない機能を維持する
- 地域資源を価値に変える型——食、文化、景観、観光など、その土地にあるものを収益に変える
- 人が集まる場をつくる型——教育、子育て、居場所づくりなど、地域のつながりを支える
- 使われなくなったものを活かす型——空き家、廃校、耕作放棄地などを再生する
いずれも「儲からないから誰もやらない」と言われてきた領域です。そこにビジネスとして向き合うのがローカル・ゼブラ企業です。
続けるためのお金の話
ローカル・ゼブラ企業の多くは、すぐには大きく儲からない領域にいます。だからこそ、資金の設計が生死を分けます。
補助金は入口としては有効ですが、それだけでは続きません。急成長を前提とした出資も合いません。時間軸の長いお金を、どこから、どういう条件で入れるか。ここが最大の設計ポイントです。
そして、社会的インパクトを数字で示せるかどうか。国の支援でも、資金調達の場面でも、この「説明できるか」が問われています。
会計士として、こんなお手伝いをしています
「うちの事業は、ローカル・ゼブラ企業に当てはまるのだろうか」。そう聞かれることが増えました。多くの場合、答えは「もう当てはまっている。ただ、それを説明できる形になっていない」です。
- 事業の棚卸しと位置づけの整理——いまの事業が地域に何を生んでいるのかを言葉にし、資料に落とし込む
- 社会的インパクトの数値化——何人に、どんな変化をもたらしたのか。行政や金融機関に伝わる形にする
- 収支計画と資金繰り——課題解決の部分と収益を生む部分を分けて見えるようにし、続けられる計画をつくる
- 補助金の活用と、その後の設計——会計処理だけでなく、補助金がなくなった後も回るモデルまで一緒に考える
- 資金調達の設計——融資・出資・補助金をどう組み合わせるか。急がない事業に合ったお金の入れ方を検討する
- 公募・申請のサポート——国や自治体の事業に応募する際の、計画書と数値計画を整える
- 法人化・事業承継——組織の形と、次の世代への渡し方を設計する
地域のためにやってきたことを、伝わる数字にする。それが、ローカル・ゼブラ企業に会計士が関わる意味だと考えています。
まとめ
- ローカル・ゼブラ企業とは、ビジネスの手法で地域課題を解決しながら、収益も確保する会社のこと
- 普通の中小企業との違いは、課題解決そのものが事業になっていることと、その成果を説明できること
- 国は2024年に基本指針を出し、実証事業を続けている
- すでにやっている事業を捉え直すところから始められる