「社会にいいことをしたい。でも、それでは食べていけない」——長いあいだ、社会貢献とビジネスは別のものとして語られてきました。
その二つを、どちらもあきらめない会社があります。ゼブラ企業と呼ばれる存在です。言葉の意味と、日本で広がっている背景、そして理念を続けるために財務が何をするのかを整理します。
ゼブラ企業とは
シマウマの白と黒の縞は、社会性と経済性の両立を表しています。「社会をよくすること」と「きちんと儲けること」を、どちらか一方に寄せない。それがゼブラ企業の考え方です。
シマウマは群れで助け合って生きる動物でもあります。競争よりも協力を大切にする姿勢が、この呼び名には込められています。
言葉が広まったきっかけは、2017年にアメリカの4人の女性起業家が発表した「ユニコーンが壊すものを、ゼブラが直す」という文章でした。
ユニコーン企業との違い
ユニコーンは伝説の生き物で、ゼブラは実在する動物です。ここが一番のポイントで、現実に目指せる成長のかたちだという含意があります。
- 成長の速さ——ユニコーンは短期間で一気に。ゼブラは時間をかけて、長く続くことを目指します
- ゴールの置き方——ユニコーンは上場や売却。ゼブラは会社が続いていくこと自体がゴールです
- 市場との関わり方——ユニコーンは独り勝ちを狙います。ゼブラは他社や地域と一緒に大きくなろうとします
どちらが正しいという話ではありません。急成長だけが会社の正解ではない、という選択肢が増えたということです。
日本では「地域の課題を解く会社」として
日本では特に、地域の課題をビジネスで解決する会社という文脈で注目されています。ローカル・ゼブラとも呼ばれます。
国も動いています。中小企業庁が「地域課題解決事業推進に向けた基本指針」(2024年3月)を公表し、令和6年度から実証事業を続けています。民間にも、ゼブラ企業を支援する団体が国内外にあります。使える支援制度は別の記事にまとめました。
農業や食といったアグリテック、文化や地域資源を扱うカルチャーテックは、この考え方が特に合う分野です。すぐに大きく儲かるわけではないけれど、地域や未来には欠かせない。そうした事業を続けるための枠組みが、ゼブラ企業という考え方です。
NPOではなく、あえて「会社」でやる理由
社会課題の解決は、これまで主にNPOや行政が担ってきました。ただ、寄付や補助金は集まらなくなれば止まります。担当者が代われば止まることもあります。続く保証がないのです。
ゼブラ企業は営利企業です。自分で稼いだお金で、課題解決を続けていく。誰かの善意や単年度の予算に頼りきらないという選択です。
ゼブラ企業にとって利益は、理念と対立するものではありません。理念を続けるための条件です。
だからこそ、財務が要になる
社会性に寄りすぎれば利益が細って続かない。利益に寄りすぎれば理念がぶれる。ゼブラ企業は、この細い道を歩き続けることになります。
その舵取りをするのが財務です。どこまで先行投資できるのか。いつ黒字化させるのか。どんなお金を、誰から、どういう条件で入れるのか。
とりわけ難しいのが資金調達です。短期の急成長を前提にした投資は、そもそも前提が噛み合わない。かといって実績の少ないうちは銀行からも借りにくい。この「はざま」の資金をどう組み立てるかが、多くのゼブラ企業の壁になります。
加えて、社会にどんな変化を生んだのかを数字で示せるかも問われます。想いは、伝わる形にしなければ資金も人も集まりません。
ゼブラ企業がつまずく理由は、志の弱さではありません。数字の設計がないことです。想いを数字に翻訳する——そこに、会計や財務の専門家が関わる意味があると考えています。
まとめ
- ゼブラ企業とは、社会貢献と収益を両立させる会社のこと
- ユニコーンとの違いは、成長の速さではなく続くことを目指すという点
- 日本では地域課題を解決する「ローカル・ゼブラ」として広がり、国の支援も始まっている
- 営利企業として社会に向き合うと決めた以上、財務は理念を守り続けるための設計図になる